生き物が動き出す、緑萌える季節
ゴールデンウィークも終わり、本格的に暖かくなってきました。
枯れ木から若葉が萌え、新芽はぐんぐん伸び、寒い間泥の底に隠れていたメダカものびのびと泳ぎ回り始めました。
冬、みんなどこにいったかと思うくらいいなくなってしまうのに毎年春になるとどこからともなく出てくるのです。
当たり前の風景だけど不思議だなぁって。生き物は知れば知るほど不思議です。
人間は冬だからといって冬眠はしませんね。犬も猫も冬でも活動します。
でも、体の弱い動物は厳しい冬を乗り越えられないこともありますね。
冬の寒さで体が冷えきってしまうと僕たち哺乳類は生きられません。
生き物の進化をたどると、初めは魚のように水中でしか生きられない生物が主流だった時代を経て、やがて陸に上がっても
呼吸ができるように肺が発達しカエルやサンショウウオのような両棲類が生まれました。両棲類は今でも生まれたばかりの頃は
水中でないと生きていくことができません。そして、その後幼生のころから陸で生きられる爬虫類が現れたと言われています。
生き物はその後も更に進化を続けます。鳥類、哺乳類などに進化を進めていくうえでそれまでと大きく違ってくるのは、自力で
一定の体温が保てるようになってきたことです。爬虫類までの生き物は気温が下がれば体温も下がってしまうので、冬になると
もはや動けません。これだけを聞くと爬虫類は哺乳類に比べて劣っているかのように感じますが、どうもそうでもないようです。
爬虫類や両棲類、魚類は寒くなると動けなくなるというよりは、寒くなったら動かないで生きていく術を身につけていると言った
方が正確かもしれません。
例えばカメ。カメは爬虫類です。冬になると体温が下がるとともに体の代謝が極端に落ち、呼吸も心拍も極限まで落とし、最終的に
栄養も酸素もほとんど利用せずに長期生きることができます。
水中に生きるカメだと、冬気温が下がると水中の泥にもぐり冬眠を始めます。カメは水中では呼吸ができないので、冬眠中は呼吸を
していないことになります。それでもしばらく生きていられるのです。
こんなことは僕たち哺乳類にはできない芸当です。哺乳類だと低体温、低酸素状態は死に直結します。なぜカメにはできて犬や猫、
ヒトにはできないのか?不思議です。医学が発達しても、やはり冷え切ってしまった哺乳類は助けられないのです。カメだったら
暖めるだけで大丈夫。
生き物にはそれぞれ適した環境がある
当院は待合室や病院前にいろいろな植物を植えています。僕の個人的な趣味で世話をしているのですが、趣味と言っても園芸自体は
経験に乏しく、素人趣味です。
気が向くと熱心に手入れをしますが、忙しくなると手抜きになるので枯らしてしまうこともしばしば…結局タフなものだけが残るので、
結果的にさほど手がかからない趣味になっています。
植物を観察していると、生き物の原則に気づかされます。
適材適所、という基本です。植物は環境があわないとすぐダメになってしまうのです。
動物にもそれぞれの動物が生きるのに適した環境というのがありますが、僕たちはやもするとそのことを忘れてしまいがちです。
植物は自分の意志で動くことができませんから、不適切な環境に置かれたものは枯れてしまい、適切な場所には繁茂します。
これは植物が自分で適切な場所を選んでいるのではなく、偶然適切な場所に行き当たった種や苗が無事に育ち、不適切な場所に置かれた
ものは育たず枯れてしまうだけなのです。
「当たり前じゃん」
そう思うでしょ。
人間はどうでしょうか。人間は環境を切り開き、自然を自分の都合の良いように開発し、植物とは違い自らの力で自分の棲家を作って
いく力がある。適所が無ければ適所を作り上げることができる力がある。そのかわり動けない植物や物言わぬ動物達に犠牲を強いて
環境を破壊する存在として、人類自らがその破壊力に警鐘をならす、そんな考え方が今の一般的な認識だと思うのです。
でも、時々思うのです。
「人間ってそんなに強い動物なのだろうか?」
ひとたび大災害に見舞われると、人のつくった物はいとも簡単に破壊されてしまいます。蜘蛛が作った巣を人がはらっていとも簡単に
壊してしまうがごとく。
飛行機に乗っている時に下を見ると、広大な山並みに一筋の川の流れを見つけ、広い緑色の樹林の中にその川筋にだけ人が住んでる
ような灰色の一帯を良く見つけます。それはあたかもタイルの目地にカビがこびりついてる有様のように。
結局人間だって虫やカビのように住みやすいところにへばりつくようにして住み着いてるんだなぁ。
時速100キロで走れるようになったって、世界中の人とインターネットで情報交換できるようになったって、空を飛んで移動できる
ようになったって、お金でなんでも手に入るようになったって、結局他の動物や植物を食べ、水を飲むことでしか生きていけないこと
に変わりはない。
動物や植物は自分で自分に必要な栄養源を得るために生活のすべてを費やします。だから動物は一生懸命狩りをします。だから動物は
一生懸命食べ物を探して回ります。だから植物は一生懸命葉を広げ、日の光を浴びようとします。
それをやらなければ生きられないのです。
人間は、食べ物を得るために働くことをやめてしまった動物です。
人間はお金を得るために働きます。
人間はいつの間にか「お金=食べ物」と思い込んだ動物になっています。
でも、人間だってお金は食べられません。誰かが食べ物となる動物、植物を採取したり、作ったりしなければいけません。
それは農家さんだったり漁師さんだったり、酪農家さんだったりします。でも、それはお金を得るには効率の悪い仕事になって
しまっていてあまりやりたがる人がいません。
食べるためにお金を稼ぐのには熱心なのに、肝心の食べ物を得るのは誰もやりたくない生き物、それが人間の今の姿のように思います。
エサを探すのが面倒で嫌いな動物、そんな生き物って他にいるかしら?
でも、それがおかしいとして、それでもやはりお金のために動くことしかできないのです。僕だってお金のために働いてます。
お金目当てに動く人のことを誰が責められるでしょうか?長年かけて人類が作り上げた貨幣経済システムの中ではそのようにしか
生きられないのかもしれません。人間がつくりあげた経済というシステムはとても便利ですが生物の営みとしては大きな矛盾を抱えて
るなぁ思うこともあります。
適材適所の話に戻ると、貨幣経済システムの中で生きることを優先するなら人間という生き物にとって適所は東京のような大都会
なのかもしれません。でも、人間という動物の本来の適所は本当は別なところにあるような気がします。
植物の話
当院の待合室にアジアンタムという観葉植物の鉢が置いてあります。
細い茎が伸び、小さな葉っぱが無数に出て、フワフワとした可愛らしい植物です。適度な日当たりと湿潤な環境を好むようで、
霧吹きをこまめにしてやると調子が良いようです。
でも調子よく伸びるほどに根元が日陰になり新しく生えてきたものに日が当たりにくいため、新しい枝に勢いが無く、やや枯れ
かけた古い枝ばかりになり、いつの間にか生きの悪い鉢になっていきます。で、きれいな新緑を保つためにはまだ枯れてないも
のも含めて古い枝を大胆に間引きします。
そうすると、よくみたら根元にはまだ2~3センチくらいの新芽が実はたくさん生えてるのに気が付きます。
あざやかな緑を保とうと思ったらまだ枯れる前から、古い枝を適度に間引きするのが良さそうです。一見緑にこんもりと茂って
いるのに満足してそのままにしておくと、新芽が伸びずに古い枝ばかりになってしまうんですね。
若い枝にいかに日の目をみさせてあげられるかが健康な株を維持するコツのようです。
さて、こちらはガジュマロの木です。
二股に分かれた根っこがユーモラスで面白いのです。栽培してみてわかるのは、この木の面白いのは上へ向かって枝がのびてる
のと同じ場所から下へ向かって根っこも伸びていく所です。その姿はまるで古い巨木のようです。
根っこは地中で伸びていくのでなかなか目にすることが無く、僕みたいな園芸の素人はついつい根っこの大事さを忘れがちですが、
これだけ旺盛に根っこが伸びていくのを目の当たりにすると「そろそろ鉢を大きなものにしてあげなければ」といったことにも
気が回ります。
生き物と仲良く暮らす
獣医という仕事は犬や猫のお医者さんというのが一般的なイメージですが、もう少しつっこんで言えば家族である犬や猫の健康管理を
通して人の生活を潤いのあるものにするお手伝いをするのが獣医の仕事かと考えています。
もともと動物が好きだからこそ選んだ職業とはいいながらも、人の生活を良好に保つということと動物の味方をするということが
相反することも多く……
時々山へ行って人の都合に左右されることなく生きている生き物たちの気配を感じに行くのです。自然を大切に、といってもそもそも
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