気持ちの良い季節です。
暖かい日差し、虫たちが飛び交い、虫を追い求めてツバメたちが舞っています。
鳥たちの糞は地面に落ちて植物の肥料になります。
木々は生き物たちの棲家になり、食べ物になり、夏は日差しを遮り、快適な木陰を提供します。庭で飼われているワンちゃんは夏になると刻一刻と移動する木陰を選んで移動しながら夏の暑さをやり過ごします。
このような木陰は今日グリーンカーテンなどと呼ばれ、見直されています。
軒先にゴーヤやキュウリなど蔓性の植物を這わせることで日差しを遮り、夏の冷房の使用を控えることで節電を促すというものです。
このような生態系の営みをうまく利用した人の棲家がいわゆる里山と呼ばれる環境です。里山の環境は人をほっとさせますが、そこには理にかなった快適な環境が備わっています。
都市化が進むとこの歯車がうまくかみ合わなくなります。
一度つじつまが合わなくなると、つじつま合わせのために無駄な営みが増え、矛盾が生じてきます。
コンクリートで塗り固められた地面に落ちたツバメの糞は公害でしかありません。
草木よ生えてくれるなとばかりにアスファルトを敷き詰めていますから、当然肥料としての役割など求められていません。
むき出しのアスファルトに草木に遮られることのない強烈な夏の日差しが照りつけます。真夏のアスファルトはさながらフライパン、
とても素足などでは歩けません。
強烈な照り返しは町全体を過剰に暖め、もはや冷房なしには生命の危険すら感じます。暑さをやわらげてくれる自然の恵みは人の手で
排除されてますので、あとは電力などに頼るしかありません。この夏も電力問題は大きな議論になるでしょう。
危険でも原発に頼らざるを得ないのかもしれません。
ところで、ビオトープというのをご存知でしょうか?
庭、池、水槽などの小さなスペースに小さな生態系のサイクルが回る環境を作り、そこに生き物を住まわすのです。
睡蓮鉢の中に水草(コウホネ、マツモ)やメダカがいます。
この中にはまだ生き物がそれくらいしか見当たりません。
でも、時が経つうちに微生物が発生します。藻が生えるかもしれません。
さまざまな生き物が多すぎず、少なすぎず、バランスよく入っているとその中であまり手を加えずとも勝手に生態系が回り始めます。
うまくいけば、自然に入り込んだ生き物も取り込みながら、滅多に水を取り換える必要もなく、餌をやらなくてもメダカは勝手に生きてゆけます。
でも、バランスを崩すと藻が大発生したり、ボウフラがわいたり、メダカの糞で水が腐ってきたりします。
メダカが増えすぎれば、食べ物が足りなくなりメダカは飢えて死んでしまい、数が減ります。メダカの糞が多かったことで水質が悪くなりがちだった鉢の環境も数の減少と共に改善されるでしょう。量が多くなければ水中の微生物が糞を分解し、それを栄養に水草が育ちます。メダカが減ると今度はボウフラがわいてしまうかもしれません。、こうなるとボウフラという食べ物が豊富になることで、再度メダカは数が増えます。こうしてバランスが保たれるのです。
ボウフラは成長して蚊になります。蚊は犬にフィラリアをもたらします。
ところが、これは人にとっては都合が悪いのです。
そこで、池を蚊の温床だという理由で埋めたとします。
埋めてしまえば、メダカも水草も全滅です。
こうしたことの積み重ねが自然環境の破壊につながるのです。
人の都合で手を加えると環境破壊になってしまうのはどうしてでしょう?
お気づきの方もいるかと思います。
メダカやボウフラは一匹一匹は割とあっさりと死んでしまいます。
ただし全滅しなければそれでよい、というのが自然の基本原則なのです。
唯一人間だけが個々の命を守る力が自然の力を凌駕してしまったのです。
凌駕しているかに見えます。でも、人間にも限界があります。長い目でみれば人間とて自然には勝てないでしょう。人間が増えすぎた地球は、メダカが増えすぎた睡蓮鉢と同じ。
大気汚染、森林の消失、食糧難であえぐ人類の姿は、糞だらけの異臭を放つ腐った水の中で腐った水草に卵を植え付けることもできず徐々に死に絶えるメダカにかぶります。
自然環境を壊さないように生きていくためには、
「なにがなんでも人間だけは全員安全に生きてやるというコンセプトを捨てる」か、
あるいは
「生態系を科学しながら、新しい環境づくりを考える」
そのどちらかしかありません。
そんなことを考えながら、病院の前にメダカの鉢を置いてみました。
でも、獣医という仕事は犬や猫の健康のために病原生物を殺すのが仕事です。
動物病院が率先して蚊の発生源みたいなものを作ってどうするんだとお叱りを受けそうな……
酒の席で、そんな話をしてみたら、帰ってきた答えは
「まぁ、…考えすぎじゃないの?」
話がまとまらなくなってきました。
今回はこの辺で。
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