暑い暑い夏です。
これだけ暑いので当院の柴犬ぽんたと楓はなかなかお散歩の機会がありません。
日が出ているうちはとてもではないですが外を歩かせられません。アスファルトが焼けるように熱く、やけどをしかねません。私たちは靴で足を保護しているから、地面がそんなに熱くなってることを意識しませんが、こんなに足元が焼けてるのが当たり前な日常というのも良く考えると異常です。
ところで、この夏ポンタと楓は2歳の誕生日をむかえました。なんとかこれまで健康に過ごせてこれたことに感謝です。
たった1年と8か月程度の付き合いでも、もうなくてはならない病院の仲間であり、家族であります。
これまでも仕事で多くの犬や猫達の病気や健康上のトラブルに接してきたハズなのに、自分の家族となるとたいしたことのないような
ことが気になるものです。
ポンタたちは今年の梅雨頃からいやに毛がぬけ、あちらこちらを痒がりはじめました。毛が抜けるのは換毛期だから仕方のないことと
思ってみていたのですが、なんだか全体的に毛がまばらになり、太ももをかじったり、わき腹を掻いたり、落ち着きがなくなってきた
のです。柴犬は皮膚にトラブルが出ることがあり、「あぁ、ポンタや楓も皮膚トラブルと付き合わなければいけないのか……」と暗い
気持ちにさせられました。
(楓はしきりに痒いところを噛み続けおなかが全体的に赤く毛が薄くなってしまいました)
このままでは辛そうです、柴犬のこうした痒みはもともと体質の問題であることも多く生涯この痒みと向き合いながら過ごすことになることも多いのですが、なんとかしてあげたいものです。
よし!これ以上大きな問題にならないように対策をしてみよう!
さて、なにをしてあげようか。
まず、大事なのは今の痒み、かじったり掻いたりするのを止めてあげることです。
これはどうしてもお薬の力を借りないわけにはいきませんでした。
でも、薬だけに頼ってかえって体に負担をかけてもいけません。
それに、よくあるのが薬を飲んでいる間は痒みが落ち着くのだけど、やめるとまた痒くなるパターンです。
そんなキリのない痒みは可哀想です。
それにしても皮膚の管理というのはけっこう難しいものです。
これまでにも多くの患者さんの治療でそれは身に染みています。
ポンタや楓の皮膚トラブルはまだ病気のうちに入りませんが、その範囲で留めておかないといけません。
そこで、皮膚の管理では重要なシャンプーによるスキンケア、食事管理などをきちんとやってみることにしました。
シャンプーにもいろいろあります。
皮膚のトラブルの原因が細菌や真菌などの病原体である時はそれらを弱らせるための薬用シャンプーが効果的でしょう。
でも、アトピーなど体質的な問題で皮膚にトラブルが起こる場合、原因は免疫の異常であったり、皮膚表面の外敵から身を守るための
バリアー機能に問題があったりしますから、皮膚表面の健康的な構造を保つうえで必要な成分を補充してあげることが大切です。
これらの成分の補給を重視したシャンプーを使うのがこの場合は適切ということになります。
楓やポンタは皮膚に湿疹などがあるわけではないのですが、気温が上がってくるとうっすら赤みが差し、痒がりはじめるので、皮膚構造の保護を目的としたシャンプーを使ってみることにしました。そして大事なのはこまめにシャンプーをするということ、そして可能であれば保湿にも気を使うということでしょうか。
シャンプーされてる間のポンタ達はげんなりとした表情でなんだかおかしくなります。
ようやくすすぎまでおわり、保湿まで済ませたら乾燥させておしまい。で、ドライヤーをかけるとものすごい量の綿毛がふわぁぁぁっっ!と舞います。今度は人間の側がげんなり…でも、シャンプーをして体のべたつきがとれると痒がらなくなります。
このままいつまでも痒くなくいられればいいのですが、日が経つとやはり痒みが出てきやすくなります。この良い状態が持続しにくいのには皮膚表面の構造がいかに健康かが関わっていそうです。で、サプリメントで栄養補給をしてみることにしました。
サプリメントというのもなかなかとらえどころのない世界です。
良い影響があるのは明らかなのですが、誰にでも効くわけではなく効果が出るまでに時間もかかりがちですので
「あんなものは効かないよ」という人もいます。
白状すると僕自身もサプリメントがどこまで効果的なんだろうと思ってた時期があります。
サプリメントは基本的には足りてない栄養を補給するための物です。
したがって、病気の原因がその栄養の不足である場合はとても効果的でしょう。
もし違う原因ならあまり効果がでないでしょう。
栄養不足。
栄養過多が問題になる昨今、今時栄養不足なわけがないじゃないか。
でも、細かく見てみると栄養のバランスが悪かったり、犬種によってはどうしてもそういった栄養を追加補給してあげたほうが調子が
良いという遺伝的な事情が絡んでる場合も多そうです。
「毎日ちゃんとご飯もあげてるし、むしろ太りすぎが悩みなのに栄養不足ですか?」
「ちゃんとしたフードをあげてるのだからバランスが悪いということはないんじゃないかな?」
たしかにそうなんですが、現実にはそれでも尚皮膚トラブルに悩まされるワンちゃんがいるし、いろんな工夫によりその痒みから解放
されることが多々あるのです。
そうした中でサプリメントの存在意義はかなり高いように思います。
サプリメントのもう一つとっつきにくいところに価格の問題があります。
サプリメントは一般的に「良いものは高い」という傾向があるように思います。
これはどの世界にも言えることですね。
いかにその価値を実感できるかが続ける上で大事な気もします。
サプリメントでの治療が続かないパターンはたいてい決まってます。
獣医さんに進められて買ってみた。 → 「高いなぁ…」 → 飲ませてもすぐには何も効果が出ない → お金ばっかりかかってなんだか続ける価値が見いだせない。
根気よく使って、効果が実感できるところまで続けるとサプリメントの良さがわかってくるのでしょうが、たいていはその前の段階で
「やるだけ無駄!」という結論になってしまいます。しかも、なかには本当にやるだけ無駄なケースもあるので……
サプリメントの治療をするにあたっては、こうしたことを理解してはじめのうちは頑張って続けてみることが大事なようです。
で、その後の楓たちですが、6月からこまめなシャンプーに加え、皮膚の健康を保つための不飽和脂肪酸のサプリメント、そして全身の
健康状態を良好に保つためのミドリムシのサプリメントを使ってみました。はじめの数週間は良くなってるんだかどうなんだか、自分でお勧めしてるサプリメントなのに自分で半信半疑という状態。
「いやいや、一か月も経ってないのにあきらめるのは早いぞ。根気よく、根気よく…」
7月に入ってもまだまだ毛がモサモサ抜け続け、特に楓のおなかは地肌むきだし、太ももをかじる仕草は相変わらず。しかも極端に暑く
なってきていよいよ皮膚トラブルが悪化しそうな気候になってきました。
「まずいなぁ、なんだか後ろ足まで毛が薄くなってきて、しかも最近ちょっと元気が無いなぁ」
この病気とは言えないけどなんだかシャキッとしない感じ、ご経験のある方もいらっしゃると思います。動物病院でもこういう症状が
一番獣医泣かせです。どうせ薬では治らないのだし、ここはサプリメントを信じて続けてみよう。
で、時は過ぎ8月。どうなったかというと正直に言えば、業務多忙に埋もれしばらく楓の皮膚のことは忘れかけていました。忘れるくらいだから今にして思えばこの頃から痒がる仕草は減っていたのでしょう。サプリメントはミドリムシ、不飽和脂肪酸ともに続けてはいましたが正直なところたいした効果も感じずに二か月が過ぎ、僕自身のサプリメントに対するモチベーションもすっかり落ち気味。
忙しいのにご飯にいちいちサプリメントをかけるのも面倒くさいなぁなんて調子で。
でも8月の忙しい日々にふと思ったのです。
「あれだけ、こまめにシャンプーをしてやろうと思っていたのに結局忙しいとできない僕って、患者さんに指導なんかできる人間じゃないなぁ、しかし待てよ?最近あまり抜け毛や痒がる様子が気にならないな?」
気が付くとまばらだったおなかの毛が少しずつ生えそろい、赤みも良くなってるようです。しかも、最近楓はなんだかいやに元気。
ポンタも妙に肉付きがよくお尻周りや肩口がプリプリしてきました。
ワンちゃんネコちゃん用のミドリムシのサプリメントもあるんです。
(6月21日痒みがひどい頃のポンタの腹。脇やおなかの真ん中が毛が薄く、赤くなっている)
(9月1日 最近は毛が生えそろい、赤みが改善。)
これがサプリメントのおかげなのか否か、判断は慎重に見るべきと思います。
皮膚は季節、換毛期、生理の周期などいろんなことに影響されます。たまたまサプリメントを飲ませたタイミングで良くなってきただけかもしれません。
でも、こうした皮膚の不安定な子達にサプリメントを試してみる価値はありそうだなと感じてはいます。そして少しでも多くの皮膚の痒みに悩んでるワンちゃんたちの辛さがやわらげることができたらと願っております。
夏もあと少し……
(わたしの痒みも早く良くなるといいなぁ……)
夏の昼下がり…
暑さをしのぐには木陰がいちばん。
冷房程涼しくはないけど、ちょっとした風を感じたり、昼から夕方に空気が変わるのを感じたり、ゆっくりと時が流れるのを感じたり。
あわてないあわてない。
ひとやすみひとやすみ。
マイクロチップの話
この夏、当院ではマイクロチップの取り扱いを始めました。
マイクロチップというのはすでにご存じの方も多いとは思いますが、ワンちゃんやネコちゃんの背中に個体識別番号を記憶させた小さなカプセルのようなもので、少し太めの注射器のようなもので背中に挿入するのです。
専用の機械を背中にかざせば番号が読み取ることができ、それをもとに飼い主の名前、住所、ワンちゃんの名前などが調べられるというものです。
これは、万が一ワンちゃんネコちゃんが家からいなくなってしまい、迷い犬、迷い猫になった際におおいに役に立つはずです。
多くの迷い犬、迷い猫達は保護されてもどこの誰だかがわからないままになってしまうことがとても多いのです。先般の大津波では多くの犬猫達が飼い主からはぐれ、今も保護施設で多くのボランティアの方々の努力でどうにか生き長らえてはいますが、この先のめども立たぬまま二年以上が経ちます。こんな時もしもマイクロチップが背中に入っていれば番号が読み取られ、連絡先もすぐにわかり、迷い犬、迷い猫達は無事家に帰ることができます。
家族が引き裂かれる悲しさは犬猫も同じです。
実際はうっかり家から、車から逃げ出していなくなってしまうことが多く、どのご家庭にでも起こりうることです。マイクロチップのご利用も一つの方法だと思います。
お気軽にご相談ください。
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